simplestarの技術ブログ

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レイヤー構造AIデザイン(古いAI技術を新しいものに置き換えるのではなく、積み重ねて利用する考え方)

ふと、別部署の方とAI談義をする機会があったのですが、興味深い気づきを与えてもらいました。
まとめます。

ゲームAI技術のうち

GA と呼ばれる遺伝的アルゴリズムによる進化
ユーティリティーベースの習性による行動優先度決め
未来予測と行動選択をするモンテカルロツリーサーチ
DNNベースの特徴学習と特徴抽出結果の利用による判別や行動決定

などがありますが、これらを別々のものととらえるのではなく、ハードウェア寄り、ソフトウェア寄りにレイヤーを組んで、一式すべてを利用するエージェントを作ると、期待するAIに近づくだろうという話に発展しました。

陸上で速く走るために、意思の力で馬は指の爪を大きくして、つま先だけで走れるようになったわけではなく
海の中を効率的に速く泳ぐために、意思の力で鼻の穴を頭の上に移動させて、手をひれのようにし、毛をうろこ状に変化させたわけではなく
世代を超えて遺伝しつつも突然変異として多様性を持たせ、より優れた適応性を持つものを多く生き残らせることで、環境に適したフォルムを手に入れる
これが GA であり、GA は世代間の種の保存を目的としたハードウェアの構成要素としての AI と考えることができます。

例えば髪の毛を意識の力で伸ばしたり太くしたりはできません。
しかし、かみそりで剃るなどの刺激を与えると早く成長したり、太く強くなったりします。
これはハードウェア寄りのユーティリティーベースの習性によるもので
より健康で長生きできたために、そのようなハードウェア寄りのベースロジックが備わっていると考えます。

息苦しくなったら窓を開け、疲れたら眠り、腹がすいたら食事をし、種を残す行為をしたがる性欲がわくといったことになります。
これはソフトウェア寄りのユーティリティーベースの習性によるもので、ここで初めて意思の力でこうした行動を抑制できるようになりますが、それは置いておいて
ひとまずソフトウェア寄りの習性を持たせることで、こうした行動を行う動物的なAIを表現できます。

未来予測と行動選択により、死に関わるような一瞬の判断など、生き残るために重要な思考を行うことができます。
これはソフトウェアの機能としてのAIで、より正確に未来を予見できるものは頭が良いとされます。
ソフトウェア寄りの習性も、この未来予測と行動選択によって抑制することができ、特に動物の中でも、人はこの力を持つことによって、我慢と協調という社会性を獲得し
時に個としての種の保存よりも、種全体の保存にとって重要な行動を未来予測によって決定して死を迎える人が存在します。
習性としてこれを持つ蜂などの昆虫もいます。レイヤー間では、高いレイヤーから低いレイヤーへ習性として、なじむように作られていると考えられます。

DNNベースの特徴学習は近年注目されているAI技術ですが、これは未来予測を有事の際に高速に正確に行えるために、事前に最適化したモデルを獲得する技術ととらえることができます。
未来予測と実際の行動結果を近づけるために限られたリソース内で簡略化したモデルを構築し、これをソフトウェア機能としてのAIで利用します。
達人と呼ばれる領域になれば、レントゲン写真から腫瘍を発見したり、刀身の動きから相手の次の太刀筋を見極めることができるようになります。

私たち生命の動きを決めているAI要素はレイヤー構造となっていて

DNN(ディープラーニング:現在2018年に人類が挑んでいる最先端技術)
MCTS(モンテカルロツリーサーチ:AlphaGoなどの人類を超越した思考AI)
BT(ビヘイビアツリー:モダンゲームAI、ユーティリティベースのAIデザイン)
GA(遺伝的アルゴリズム:基本AI、ランダムに変化させて、良かったものを残す単純ロジック)

という順番でレイヤーを構成して、それぞれ下からハードウェア寄り、上に行くにつれてソフトウェア寄りにアルゴリズムやロジックを配置して走らせることで、生命として、意識を持つAIとして機能し始めることが初めてできるのではないか

なーんて、飲み会の後の酔った頭でバスに揺られながら1時間ほど話をしてました。
最近はAIを作るには未来予測が重要だと示していましたが、もちろんそれは変わりませんが、既存のGAや最新のDNNなども、未来予測を挟み込むレイヤー技術と考えることができるようになれたのが大きいです。
このレイヤー型技術を真剣に取り入れていけば、環境に適用するように世代ごとにだんだん進化していき、環境に適した習性をもつようになり、そのうえで習性を抑制するように直近の望む未来への行動を決定する AI が作れるようになると思うのです。