simplestarの技術ブログ

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AI:「作って動かすALife」本を読んでの感想

読んだ本の情報

作って動かすALife
――実装を通した人工生命モデル理論入門
www.oreilly.co.jp

著者の一人に、次の対談に出てくる池上高志さんがいたので気になってました。
boundbaw.com

ALife 人工生命の入門書として書かれています。

個人的なとらえ方によるざっくりとした内容

1. ALife とは?
これまでの抽象的な生命論はやめて、実験的な数学を通して具体的に生命について理解を深める研究のこと
2. 生命のパターンを作る
蝶の羽模様や魚や動物の体表の模様、貝殻のパターン模様などが単純な数式で再現できる例を示す(Gray-Scottモデル)
3. 個と自己複製
個の定義も難しいがそれは置いておいて、ビット配列の遺伝子パターンを読み取って自分と同じ形を複製する2D世界のマシンを作り、これが無限に増殖していくものは考え出されていて、実際コンピュータで計算できることも示されている。(しかし、とても計算量が多くて時間がかかる)突然変異が遺伝子の一部を壊し、自己の複製ではなく変異種を複製し始め、様々な個体が生まれ、時に元の個体を複製するように戻ったりすることが観測できた。
4. 生命としての群れ
Bird-oid と書いて鳥っぽいもの群れとして Boids と呼び、よく ECS などで群のシミュレーションを行うアレの話。巨大で複雑にしないと進化が起きないという話もあったかも
5. 身体性を獲得する
認知・判断・行動と直列で構築したAIはアホすぎて、簡単な目標もクリアできなかったが、「障害物を見つけたら避ける」「何もなければ適当に動き回る」「目的地を見つけたら近づく」という反射的行動、迷った時の行動、目的意識を持った行動を階層化し、より高い意識層が下位の反射層を制御することで、複雑な目標をクリアでいることを示した。
6. 個体の動きが進化する
遺伝的アルゴリズムの・選択・突然変異・交叉の例を示して、生命ってのは自然淘汰の中での単なる多様性を生み出しているだけなのかもねって話
7. ダンスとしての相互作用
相互に影響し合うことがなければ飽きが来る、同じことを繰り返していても飽きが来る、この飽きが安定状態から不安定状態へと遷移させ、似たりよったりの中から新しいものが生まれる進化が巻き起こる
8. 意識の未来
やはり知能は内部でイメージを持ち未来予測や期待をして、実際に観測した情報との統合を行っていて、この時間の流れの中に意識があると考える。
一見無駄とも思える冗長な未来予測が創造につながり、こうした予測と行動選択は現実を生きるために不安定でなければならず、これが曖昧で定義できない意識なのかもしれない。

個人的な感想

私は特に文献を漁らずに AI について思ったことを書いてきました。(隙あらば自分語り…)
たとえば、ちょうど 2年前の記事
AI的な調べもの - simplestarの技術ブログ
>人工知能はマイクロワールドから出られなかった
>AI に身体性を持たせる必要がある
>その身体性をマイクロワールドの中で与える試みを行おうと思う

それからマイクロワールドの開発を進め
計算に時間がかかりすぎるので Unity ECS を学んでいたのが最近までのこと

このマイクロワールドのAI作りで役に立つ知見が得られるかもしれないとこの本を手にしました。

普段考えていたことの言語化ができるようになった気がします。
例えば、飽きがこないゲームとは、相互作用があり、それが安定しないことである
とか、冗長な未来予測の中で創造や発見が生まれ、知的に振る舞うエージェントを表現できる、など

そのほか、認知・判断・行動の直列をやめて、並列化して本能と理性の階層化により、理性で本能を抑えると知的に振る舞うという新たな知見を得ました。

これから AI をプログラムに落とし込むときに役立つ知見が一点増えた気がしました。